オーストリアのキンツ博士が、日本の子供たちの靴を調査
70%以上が小さな外履き。しかし、その原因は…
今春のことだが、オーストリアのスポーツ科学者ヴィーラント・キンツ博士が、日本の子どもたちの靴を調査した。キンツ博士は、既にオーストリアやドイツなどで同様の調査を行っているが、例えばオーストリアでは、69%の幼稚園児が小さな外履きを履いていたなど、どの国でも小さな靴を履いているという結果を得ている。
日本では、どうだったのか。
調査には、東京と長野の幼稚園&こども園合計9ヵ所で実施した。総調査人数は、620人(女児299人・男児321人)。
調査項目は、足長と履いている外履き及び室内履き(上履き)の内側の長さ(内側長)。またそれぞれの靴の表示サイズも記録した。
計測は、足長はフットゲージ、着用靴の内側長は、キンツ博士考案の内側長計測ゲージ「plus 12」と使用した。「plus12」は、キンツ博士が必要とする爪先余裕「12㎜」をゲージの先端に加えた計測ゲージ(写真参照)だ。
結果は、外履きでは72.1%、上履きでは81.6%が、小さい靴、すなわち爪先余裕が足らない靴を履いていた。
爪先余裕は、周知の通り、業界では捨て寸と言われ、歩行時の足の運動に対応する靴には不可欠の運動空間だが、どの程度、捨て寸を取るかは、靴のデザインにもよる。子ども靴の場合は、成長余裕を見込んで10㎜としているのが、一般的なようだ。
キンツ博士は、12㎜とし、考案の内側長計測ゲージのネーミングは、それに起因しているが、今回の調査結果の分析は、「爪先余裕10㎜未満」を「爪先余裕が足らない=小さい」とした。そういう状態の靴を履いている子どもが、外履きでは70%以上もいたのだ。
こういう状態が改善されなければ、近い将来、足にトラブルを起こすことが必至だが、そもそも原因は、何なのだろうか。
キンツ博士は、原因を示唆する調査も行った。靴の内側長の計測結果と、その靴のサイズ表示を比較したのだ。
その結果は、サイズ表示「17.0㎝」の靴では、内側長が170㎜以下の靴が、81.6%だった。
日本の靴サイズ表示は「足入れサイズ」という方式を採り、例えば足長170㎜の足が履いて適正な靴に「17.0㎝」と表示している。つまりサイズ表示「17.0㎝」の靴は、爪先余裕を見込んで設計されているはずであり、内側長は170㎜より長くなくてはならない。
サイズ表示は、あくまでも目安だが、80%以上が爪先余裕がない状態では、目安にもならない。子ども靴を製造・販売する者は、この結果を、いかに捉えるのだろうか。 調査結果の詳細データは、11月発行予定の「Obring Newsletter」で。
たいとうこども園(東京都台東区入谷)での調査の様子
キンツ博士考案の靴内側長計測ゲージ「plus12」