Fashion&Culture
Posted on 2013/8/28
WHAT DO YOU STAND FOR?
2013年秋冬ドクターマーチンのキャンペーン・テーマは「STAND FOR SOMETHING」。その動画第二弾が公開されている。
第一弾ではドクターマーチンの「STAND FOR SOMETHING」を歴史を追いながら映像化しているが、第二弾は「WHAT DO YOU STAND FOR?」と問い掛ける。
登場するモデルは、マンチェスターのバンド「The Minx」、ラッパーの「Rude kid」、ロンドンのヘア・スタイリスト「Saph」、アーティストの「Wildcat Will」など。世代、職業、個性もバラエティに富んでいるが、共通しているのは、ドクターマーチンを身に付けることに自己表現の価値を見いだ出していることだ。
そして彼らが問い掛けに答えて、自分の「STAND FOR SOMETHING」を語る。
メイクアップ・アーティストでドラッグクィーンのガイの答えは、「人々に疑問を投げかけ続けること」。
人気歌手を輩出することで有名なアート・スクール、Brit school卒業の英国在住ガーナ人シンガー・ソングライターは、「ちっぽけなことに囚われずつねにフレッシュな感情を表現すること」。
このキャンペーンで楽曲を採用しているバンドThe Minxは、「未来をつくる若者のために」と立ち上がる。
さて、マーチン・ファンのあなたが「WHAT DO YOU STAND FOR?」と質問されたら、何と答えるか。
ドクターマーチンは、このキャンペーンと連動させ、あなたの「STAND FOR SOMETHING」を書き込めるソーシャルメディアも用意している。
答えてみたい人は、以下のページから是非。
https://www.facebook.com/drmartens/app_144387832431824

創業者ベンシャイトとグロピウスのコラボレーションで生まれた、モダニズム建築の黎明
富士山が世界遺産に登録されたが、靴に関係する世界遺産があるのをご存じだろうか。
2011年に登録された、ファーガスの工場だ。
この名前を思い当たる読者は、靴業界通だ。
ファーガスは、ドイツの靴型メーカー。精緻に設計された靴型で世界に知られ、日本にもそのノウハウによる製品が流通していたこともある。
ユネスコの世界遺産リストでは「ファグス」として紹介されているが、靴業界では、筆者の知る限り、「ファーガス」として通ってきたので、「ファーガス」と表記することにする。
それでなぜ、世界遺産なのか。バウハウスの創立者であり、モダニズムを代表する建築家、ヴァルター・グロピウスの設計なのだ。
そのモダニズムは、1926年のデッサウのバウハウス校舎によって世界に知られるところとなった。ファーガスの工場は、それより10年以上前の1911年の着工だが、何よりの特徴は鉄枠で支えられた全面ガラスの外観だ。バウハウス校舎の特徴は、鉄とガラスの使用であり、モダニズム建築は装飾のない直線的な構造の合理的な機能美であるが、ファーガスの工場には、それが既存在し、モダニズム建築の黎明と言えるのだ。
そして素晴らしいのは、この工場で今も靴型が削られていること。生きた遺産なのだ。
ファーガス靴型工場は、この2点によって、世界遺産に登録されたのである。
筆者が、ここを訪れたのは、昨年3月。現社長のエルンスト・グレーテンさんが、どのようにして世界遺産工場が誕生したのかを話してくれた。
モデル靴型の製作部門。外の光を浴び、外の景色に癒されながら仕事ができる
社員用レストランを外から見る
●「働く者のためにたくさんの光を」(ベンシャイト)、「ならば外壁を一面のガラスに」(グロピウス)。
ファーガスは、ハノーファーから車で30分程の小さな町、アルフェルドにある。創業者は、カール・ベンシャイト。彼こそが、グロピウスを起用した、その人だ。
アルフェルドには、ベーレンスという大きな靴型メーカーがあった。ベンシャイトは、その設計部門のマネージャーとして働き、業容の拡大に大いに貢献した。
しかし社長が他界し、経営陣が一新されると、経営方針も転換。新しい経営陣は、ベンシャイトにベーレンスを去ることを強要した。
そこでベンシャイトは、かねてより交流のあったアメリカの製靴機械メーカー、USMの援助を取り付け、自分の靴型メーカーを設立する。その時、ベーレンスの従業員150人もが、ベンシャイトに従ったという。
さて、どんな工場にするか。
ベンシャイトが最初に設計を依頼したのは、ベーレンスの改装を手掛けたことで知っていた建築家だった。その建築家は工場のデザインで知られた人物だったが、ベンシャイトは上がって来たデザインの外観が気に入らなかった。なぜならベンシャイトが自分の工場の場所に選んだのは、川を挟んでベーレンスの向かい側。コンペティターとなった、古巣レーベンスとの違いを、工場そのもので明確に主張したかったのだ。
さあ、いよいよグロピウスの登場だ。
ベンシャイトが独立を決意したのは、1910年。グロピウスは、アドルフ・マイヤーと二人で事務所を設立したばかり。つまり独り立ちしたばかりだった。それで仕事を求め、建築のニーズがありそうな会社に手当たり次第に手紙を送っていた。
その一通が、ベンシャイトにも届いた。ベンシャイトは、「ペーター・レーベンスの元で見習い経験」という一文に興味を持った。ペーター・レーベンスは、モダニズム建築初期の代表作としれ知られる、ドイツの総合電機メーカーAEGのタービン工場を設計した建築家&デザイナーだった。
ベンシャイトは、グロピウスに連絡を取った。そして、自分がどんな工場を作りたいかを話した。
「靴型づくりは緻密な作業です。また埃が出ます。こうした靴型作りの特性を考慮し、光りがいっぱい入る明るく、清潔な環境、また従業員のために地下には浴場、さらには工場敷地内に集合住宅も。ベンシャイトが求めていた工場とは、こういうものでした。
私は彼に曾孫になりますが、彼の死後、300ページにも及ぶ人生訓をまとめたノートが見つかりました。ベンシャイトは、そういう人物でした」(グレーテン社長)。
グロピウスは、ベンシャイトの理想と人柄に触発され、彼の創造性を遺憾なく発揮し、自らが理想とするモダニズムを形にした。
世界遺産ファーガス靴型工場は、来るべき世界への理想を持つ二人、ベンシャイトとグロピウスのコラボレーション作品なのだ。
カール・ベンシャイト
ヴァルター・グロピウス
工場の完成模型
設計図の一部(すべて「ファーガス−グロピウス展示場」の展示より)
●私たちは日々、ここで働き、工場と共に生きています。
世界遺産登録への歩みは、1982年に始まった。この年に文化遺産として遺すという合意が政府との間で成立。改修費を折半で負担、改修工事が始まった。
最大の改修は、ガラスの外壁を二重ガラスにしたことだ。しかしガラスを支える鉄のサッシ、つまり窓枠の細さは、グロピウスが設計した通りに保たれ、また外壁が交差する建物の角のガラスの接合部もオープンなスタイルを維持している。付け加えられたのは、天井部の断熱材。夏場は暑くて仕事ができないためだ。こうして完璧な改修が行われたが、10年計画のところが、実際には20年を要した。
世界遺産登録は、ユネスコの調査の結果、1987年にリストに掲載するとのコメントを得た。しかし実際に登録されたのは、2011年7月。その年はファーガス創業100周年に当たっていた。
グレーテン社長は、語る。
「私たちはここで日々、働いています。光がたくさんの作業場、スペースがたっぷりの事務用の部屋、明快で簡素にデザインされた美しさ、それらがもたらす働きやすさは、私たちを癒します。見るだけの遺産ではないのです。働く私たちと一体で生きているのです」。
一般の人は工場内部を見学することはできないが、敷地内の木造倉庫を「ファーガス−グロピウス展示場」とし一般公開している。
展示は、ベンシャイト、グロピウスそれぞれの人となり、工場模型、設計図等々の他、企画展も行われている。
最後に企業としてのファーガスの現状を紹介すると、現在の社名は「FAGUS-GRECON GRETEN GMBH & CO. KG」。靴型製造だけでなく、主に木材加工業のために作業中に発生する火花を予防・消火するシステム、さまざまな測定システムやスキャナー、それに短い木材片をジョイントし長く、あるいは厚くする技術によるウッドボードの製造、この三つから成っている。
そもそもファーガスがアルフェルドにあるのは、豊かな森林をベースにした木材加工業が盛んな地だから、因みにファーガス(fagus)とは「ブナ」のこと。木材を扱うことをベースに多角化に成功しているのだ。
そして靴型製造はと言うと、ファーガスが創業した時、ドイツで47番目の靴型メーカーだったそうだが、現在、残るのはファーガスを含む3社のみ。この世界遺産の工場での製造だけでなく、タイで合弁事業を展開。自社の測定システムやスキャナー技術と連動させ高精度靴型の製造を行っている。靴型製造業そのものが斜陽になる中で、意欲的なビジネス展開を行っている。
エルンスト・グレーテン社長
モデル靴型の保管庫
生産部門
靴型設計部門
●ファーガス靴型工場=Hannoversche Straße 58 31061 Alfeld GERMANY
・ファーガス-グロピウス ホームページhttp://www.fagus-gropius.com/(ドイツ語のみ)
・ファーガス ホームページhttp://www.fagus.de/
主張する靴DMで、主張しよう。
8月1日、ドクターマーチンの2013年秋冬キャンペーンがスタートした。
テーマは、“STAND FOR SOMETHING”。
YouTubeで“Dr. Martens – History of Stand For Something”が公開されているが、それはマーチンが主張のツールであったことを明かしている。
工場で走るミシン、行進するジーンズ+「1460」、焼かれるユニオンジャック、引き裂かれたメッセージ「END LOW PAY」、それを乗り越えて進む8ホール、炸裂するロック……、そしてそのスピリットは現代へと繋がれる。
この間に映し出されるマーチンの“STAND FOR”。
I stand for the working man.
We stand for united sprit.
We stand for non-conformity.
We stand for our rights.
We stand for free sprit.
We stand for being British.
We stand for being an individual.
労働者、団結、反骨、権利、自由、英国、そして個人。
これらは、ドクターマーチン・カルチャーのコンセプトであり、英国の精神だ。
2013年秋冬は、そんなスピリットを確認し、改めて主張するシーズンなのである。
さあ、マーチンを履いて、自己主張のシーズンに歩みだそう。
Dr.Martens – A History of Stand For Something