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Posted on 2013/7/18
井野将之「ダブレット」
2013年春夏、メンズ・ブランド「doublet(ダブレット)」がデビューした。
デザイナーは、井野将之。「MIHARA YASUHIRO」の靴・アクセサリーの生産企画に携わり、フリーを経て、自身のブランドを立ち上げたのである。
靴ブランドではない。トータル・ブランドだ。しかし、経歴が靴に力を入れさせずにはおかない。デビュー・コレクションは、まだ生煮えの感があったが、2シーズン目となる2013秋冬は、意欲的なコレクションに仕上げた。
中でも、井野が言うところの「半分裂」。革を吟面側と床面側の二つに裂くテクニックだ。デビュー・コレクションから挑戦していたが、2013年秋冬で一つの形になった。
外羽根のショートブーツ。正面から見ると、外側の羽根がスムース、内側がベロアのコンビに見えるが、違う。
ここが「半分裂」。一般的には、この部分は二つの甲革パーツを縫い合わせて作るが、一枚のみ。それをカカト側の3㎝を残して二つに裂き、腰革としているのだ。ベロア風に見える内側は、外側の床、スプリットレザー。そして3㎝残した部分は、プルトップにように突き出ている。
「半分裂」が、一つのデザインとして結実している。
使用している革は、アメリカのタンナー、ホーウィン製。高級革だ。
無闇に付加価値を付けようとした訳ではない。通常流れている革だと、裂いた部分が余計に裂けてしまい、堅い革にするとラストにフィットせず履き心地が落ちる。余計に裂けない組織の堅牢さと柔軟性を兼ね備えたの革を探した結果が、ホーウィンだった。
またアウトソールは、タンクソールの意匠を型押しした革底。ゴム製より軽い。
「半分裂」で腰革部分が一枚で済んでいることも加わり、軽いワークブーツに仕上がった。
ブランド名は、「不思議の国のアリス」の作者、ルイス・キャロルが考案したゲーム「doublets」に因んでいる。対戦者に与えられた二つの言葉の一方の一文字を変化させ続け、もう一つの言葉に辿り着かせるという、言葉遊びゲームだ。
見慣れたものが、少しの変化の積み重ねとアイデアで全く違ったものに変位する。井野のデザインに対する、そんなイメージが込められている。
ちょっとコンセプチュアルなメンズ・ブランド、いや靴ブランドの誕生だ。
なお、井野は、繊維ファッション産学協議会が主催する「2013Tokyo新人デザイナーファッション大賞」プロ部門のビジネス支援デザイナーに選出された。
http://doublet-jp.com/
完全防水8ホール【DMウェリントン・ドレンチ】
ドクターマーチン・ウェリントン・ドレンチ(WELLINGTON DRENCH)は、完全防水の8ホールだ。
製法は、日本で言うところの加硫、つまりバルカイナイズ。
えっ?!なのであるが、見た目は本当に8ホールそのまんまなのに、よく見るとアッパーは、革ではない。ゴムなのだ。
そしてさらによ〜く見ると、実に考えられた構造になっている。
本体は、ラバーの筒、つまりラバーブーツだ。それに8ホールを8ホールたらしめる八つのホールを空けた羽根を取り付け、さらに筒の甲部正面から足首、脛に掛けては、たるみを持たせた裏なしの薄いゴムになっている。これがベロの役割を果たす。筒部と一体なので隙間から水が浸入する心配はないし、かつたるみが持たせてあるので、足に合わせて締めることができる。
アウトソールは、ドクターマーチンソールを模した意匠デザインのゴム製。イエローステッチもしっかりで、グッドイヤー製に見える。
ネーミングの「ドレンチ=DRENCH」は、「どしゃ降り」といった意味だが、「ウェリントン=WELLINGTON」は、ウェリントン・ブーツだ。
イギリスの英雄、ウェリントン公・アーサー・ウェズリーが、ワーテルローの戦い(1815年)の際に考案した筒丈がやや短いブーツが、ウェリントン・ブーツ。もちろん革製であったが、19世紀半ばにゴムの加硫技術が開発されたことによりゴムで作られるようになり、ラバーブーツの典型スタイルにもなった。現在では、革、ゴム製共にアウトドア用に愛用されている。
わっ、欲しい。でも、今年は早々と梅雨明けしてしまった。
ご安心あれ、マーチンの提案はニクイ。「野外フェスにどうぞ」というのである。真夏は、野外ロック・フェスの季節。しかも、今年は豪雨を伴う雷が多い。買いだ。
2012年秋冬発売のヒット・モデル。マーチンの代表カラーであるチェリー・レッド、マット・ブラック、マット・グリーン、この他パテントのピンクなどと色揃えも豊富。小売価格は11,550円。
http://www.dr-martens.co.jp/store/176.html
「ステファノ・ガンバ」のショート・ブーツ
最新のファッション・トレンドは、グランジ。1990年代初めに注目されたグランジ・ロックから生まれたファッションだ。
そもそも「グランジ(grunge)」とは、「汚いもの」という意味。ユーズド、つまり古着感覚がポイントな訳で、古着と言えば、ジーンズ、また軍物も、その一領域を形成する。
という訳かどうかは定かではないが、今秋冬は、メンズ、レディスを問わず、カモフラージュ・プリントがホットだ。
そこを捕らえているのが、「ステファノ・ガンバ」だ。リアル・ムートンにカモフラージュ・プリントのショート・ブーツを打ち出している。サバイバル風のコーディネートが浮かんでくるが、それがトレンドをスタイルとして消化している証拠だ。
「ステファノ・ガンバ」は、イタリア・フィレンツェ発のブランド。著名ブランドの生産を手掛けた後に、代表のガンバ氏が自らの名前でオリジナルブランドを打ち出した。
婦人靴も手掛けるが、日本ではメンズの方が知られている。春夏物ではモカシンが多く出回っており、その中には既にカモフラージュ・プリントも。また昨年秋冬は、ブーツで実績を作っており、今年もの期待は高い。
さらに価格も手頃。輸入元のドゥオモ商事が打ち出す小売価格は、28,500円だ。
●ドゥオモ商事TEL03-3871-1431