Fashion&Culture
Posted on 2013/5/13
神戸ファッション美術館で展覧会開催中、作品集も出版
高田喜佐は、日本の靴デザイナーの草分けだ。
1966年、個展「靴のファンタジー」を開催。純粋に作品展であったが、思いも掛けず来訪者からオーダーがあったことをきっかけに、プロの靴デザイナーとして歩み出す。
70年にプラットフォーム・シューズの世界的流行に先駆け、通称「ポックリ」を発表、翌年、山本寛斎氏の「KANSAI in LONDON」に「ひな壇ブーツ」を提供、そして77年、渋谷パルコPART2に「ブティックKISSA」を出店。パルコPART2は、デザイナーブランドの殿堂であったが、そこにブティックを持ったことは、川久保玲などと肩を並べるデザイナーとして認知されたことを意味していた。
この間、子どもの頃から好きだったズックをファッションとしてデザインすることに取り組み、76年に当時の月星化成(現・ムーンスター)とライセンス契約を結び、「キサ・スポーツ」を発売。また、グッドイヤー製法のプレーントウやローファーを女性のためにデザインした。
ズックとマニッシュは、代表作となり、本人をこれを「大人のカジュアル」と呼んだ。
ところが90年代を目前にした89年、パルコのブティック等を閉店し、事業を縮小。これ以降は、靴デザイナーでありながら裸足、また和服が好きという元来の自分を素直に表現し、草履サンダルなどをデザイン。同時に母である詩人、高田敏子から受け継いだ文才によって、エッセイストとしての活動を積極的に行った。
しかし、病を得る。それから半年余りの2006年2月、逝ってしまった。
神戸ファッション美術館で開催中の「高田喜佐 ザ・シューズ展」には、この生涯で作り上げた約800点の靴が展示されている。
このすべてが、高田喜佐本人の手によって保存されたものだ。毎コレクション毎に気に入ったモデルを保存し続け、亡くなった時、その数は1500点余りにもなっていた。(株)キサを継承した弟の高田邦雄氏は、これを整理し、神戸ファッション美術館にずべてを寄贈。800点は、その中から選りすぐられたものだ。
展示は、「FUN TO DOEK−ズックは楽しい」「WONDERLAND−素足に翼を」「BIOGRAPHY」の三つの部屋に分けて展開される。
かわいい、欲しい、履きたい、なんておしゃれなの−−ズックを満喫すると、次の部屋には、気分を解放してくれる素足モードの靴たち、最後の部屋では、高田喜佐の生涯を靴でたどれる。
展示の案内役は、80点以上の靴の写真パネル。その他、自筆のイラスト、靴のデザイン画、「KISSA」のポスターやDMなど、そして最後には、服やきものなど愛用品が待っている。
関連イベントも企画されており、クリエイティブディレクターの小池一子さんやスタイリストの原由美子さんなどによるトークショーは終了してしまったが、6月2日に開催されるのが、ミニ・ズックづくりのワークショップ。生ゴムのシートを使い、「KISSA」のズックをお手本に、小さな(10.5㎝)のズックを作ろうという試みだ。
また、展覧会に先立つ2月、作品集「高田喜佐 ザ・シューズ」が、繊研新聞社から出版された。
展示の構成は、この作品集の章立てに準じており、掲載点数は、展覧会よりも多く、約1000点に及ぶ。
展覧会場で入手可能。展覧会で自由な発想でデザインされた高田喜佐の靴に触れた後は、作品集を手許に置き、高田喜佐のクリエイションを楽しんで欲しい。
展覧会は、7月2日までだ。
●神戸ファッション美術館=神戸市東灘区向洋町中2-9-1(六甲アイランド)TEL078-858-0050
http://www.fashionmuseum.or.jp/
「高田喜佐 ザ・シューズ」
繊研新聞社刊
A4変型判(274×208×18㎜)・152ページ
定価2100円(本体+税)
マノロ、ルブタン、靴フェチ女性etcが肉声で明かす、深い靴文化とハイヒールの真実
ロードショー公開中の「私が靴を愛するワケ」は、ドキュメンタリー映画だ。
ポーカープレイヤーのベス・シャックは、なんと1400足も靴を持っている。
「ヴォーグ」元アクセサリーエディターのフィリッパ・フィノにとって、靴はフェラーリと同じだ。
歌手のケリー・ローランドは、靴に名前を付けている。
アーティストのニキ・スキロにとって、靴は「履くだけなんて拷問よ」としまうほどの宝物だ。
靴デザイナーも登場する。
マノロ・ブラニク、クリスチャン・ルブタン、ピエール・アルディ、ブルーノ・フリゾーニ、ロベール・クレジュリー、それにウォルター・スタイガー。そして彼らの口からサルヴァトーレ・フェラガモ、ロジェ・ヴィヴィエ、さらにアンドレ・ペルージアさえ語られる。
その他、バータ靴ミュージアムのキュレーター、産業分析家、靴研究家、作家、女性セクシュアリティ研究家、心理分析家、認知行動療法士、フェティッシュ写真家、足専門医等々。
専門家は各専門の立場から分析的、かつ女性靴フェチ自身さえ客観的な言葉が紡がれ、靴=ハイヒールの真実が明かされていく。
観おわった時、自分の足元に目を落とし、私にとって靴とは…と問いかけたくなるはずだ。
因みにこの映画が明かすところによると、アメリカ女性の年間靴購入数は7〜8足。これを追うのがフランス。「ヴォーグ」誌の調査によると、読者の8割は靴中毒者で、靴平均所有額が9000ドル、小型車1台分に匹敵。さらにアメリカの靴小売市場は伸びを続けており、靴店の年間売上高は約600万ドル(1$=100円換算で6億円)、靴小売市場規模は400億ドル(同4兆円)に及び、その6割が婦人靴というのである。
肉声で語られる「靴を愛するワケ」が立証するのは、この市場の背景に、深い靴文化があるということだ。
どうでしょう、靴を生業とする皆さま。日本の年間購入足数は、全体平均だが、5.4足。日本は、まだまだだ。
靴文化が深まれば、市場は豊かになる。
深い靴文化とは何か。この映画を観ると分かる。
東京は、新宿武蔵野館で公開中、大阪はシネマート心斎橋で6月15日から。その他、詳細公開情報は、
http://www.alcine-terran.com/shoes/で。
© Caid Productions, Inc. All rights reserved./©Mattel, Inc.
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