shoes
Posted on 2012/06/07
花柄に託された、時代を切り取って来た二つの英国ブランドの精神
「ドクターマーチン」とリバティのコラボレーション・モデルの販売が6月1日、日本でもスタートした。
リバティは、ロンドンのリージェント・ストリートにある百貨店。というよりリバティプリントと言った方が話が早いだろうか。
リバティは1875年の創業だが、そもそも装飾品や美術品、それにファブリックを販売していた。しかも、日本と東洋の諸国の製品。当時のヨーロッパは東洋ブームだった。創業者を、ここに着目した訳だが、故に大成功。自社オリジナルのファブリックを製造、また服飾品、つまり衣料も手掛けるようになり、現在の業態へと発展していった。
テキスタイルについては、19世紀末、当時流行のアールヌーボーを取り入れたデザインを発売したことによってリバティ・スタイルを確立。さらに1920年代、流行のアール・デコを意識しつつ、シンプルで繊細にデザインした花柄を発表したところ、これが「リバティプリント」として知られるようになった。
という訳で、コラボ・モデルは、もちろんリバティプリント。
そしてドクターマーチンにとっても、花柄は意味を持つ。
ドクターマーチンは、周知の通り、元々は作業靴だったが、1960年代、労働者の権利を訴えてデモを行った英国の労働者達が履いていたことによって、ある精神の象徴となった。その精神とは、反骨。だから常にドクターマーチンは若者文化、カウンターカルチャーと結び付くのだが、1980年代、若者達はマーチンの8ホールにハンド・ペインティングで花柄を描き、より“自分”を主張しようとした。
花柄には、こんな二つのブランドの精神が刻まれている。
5月から販売がスタートしたロンドンのリバティでは、ウインドーをリバティプリントのドクターマーチンが美しく飾った。
「MR.MARTENS× LIBERTY」は、8ホールブーツと3ホールシューズ他、全6点、それに学生カバン風のサッチェルが4点。
サイズは、23.0~27.0㎝。ボーイズ・ラストを使用しているので、女性向きだ。
渋谷他、全国のドクターマーチン・ショップを中心に販売されている。

ロンドン・リージェントストリートのリバティのウインドー
額縁に飾られた絵のような美しいディスプレイ
8ホールブーツ 24,990円
3ホールシューズ 21,840円
Briar 18,690円
Leather Satchels(11インチ) 27,090円
お薦めはウンチクを傾けられるアメリカン・ドレス
「three generations」は、大阪の靴卸、野口彦のオリジナルブランド。流行のスタイルに流されず、自分のスタイルを求めたい…。そんな第三世代に向けたブランドだ。
だからブランドを構成するモデルのスタイルにこだわっていない。ドレスからカジュアルまで、流行を超えて通用するスタイルを追求している。
そして、このコンセプトは、「three generations」をプロデュースする、野口彦代表の野口貴弘さんの思いの結実でもある。
「自分には、二人の尊敬する先輩がいます。お二人とも靴づくりに携わる方ですが、頑固なまでの“個”をお持ちで、お作りになるのでベーシックなモデルなのですが、どこかに遊びというか、洒落が効いている。それは、“個”を持っていらっしゃるからだと思うのです」(野口さん)
「流行に流されない自分のスタイル」とは、この“個”を意味している。
そして、その思いに照らした自信作が、手縫いウエルトのアメリカン・スタイルのドレス。ぽっこりしたトウがアメリカンの所以だが、アイビーで始まった日本のメンズ・ファッションにとっては、原点とも言うべきスタイルだ。
製造は中国。手縫い職人を抱える上海の工場で製造している。
この中国製という一点が、この靴のマイナス要素になっているようだが、上海の靴づくりには歴史がある。なにしろ、日本に靴づくりを伝えて人物の中に、藩浩(はんこう)という中国人がいるのだ。
かつて上海租界は、国際都市。そこに暮らすヨーロッパ人のために服飾の技術が発達した。もちろん、靴づくりもだ。
そして日本が世界に扉を開いた時、服飾、それに軍隊の西洋化によって靴産業が興ったが、靴産業の創始者である西村活動が最初に招いた靴教師が中国人、藩浩だったのだ。
軽んじるどころか、日本の靴づくりの師は中国、と言ってもいいのだ。
野口さんは「新しい靴を買った時、ウンチクを、彼女に自慢できるような靴が作りたい」とも。こんなウンチク、いかがかな。
http://www.ngc-hiko.com/three/
長谷川まゆみがデザインする「かわいい」靴
今秋冬物でデビューの新ブランドを紹介したい。
ブランド名は、「Ch’aska」。「チャスカ」と読む。
デザイナーは、長谷川まゆみさんだ。
長谷川さんは、ヒコみづのジュエリーカレッジ・シューメーカーコースで靴を学んだ。卒業後は、サンエーインターナショナルによる「TO & CO.」でアシスタントを務めた。自身のブランドを持つに至ったのは、「TO & CO.」の濱田比止志、若林正裕両氏の抜擢があってのことだ。
「チャスカ」は、「星」を意味するケチュア語に由来している。ケチュア語は、インカ帝国で使われていた言葉で、現在も南米の一部の地域で使われていると言う。
デビュー・コレクションは、バレリーナやチャッカー・ブーツなどローヒールだけで構成している。
持ち味は、可愛さ。今や海外で、そのまま通用するようになってきている「カワイイ」は、ギャル系のテイストのイメージだが、それとは異なる、言ってみれば平仮名がしっくり来るような「かわいさ」だ。また、インディオをイメージするようなテープ、アルパカを使ったりと、ブランド名が由来する南米への思いを感じさせるデザインもある。
長谷川さん曰く「チャスカには、星から転じてビーナスを意味したりします」。
目指すのは、「かわいい」ビーナスの靴。
価格は、バレリーナで16,800円からとリーズナブルだ。
◎ショールーム・フーゾオラリオ=東京都港区東麻布2-28-6 TAC東麻布101 TEL03-6277-6116
デンマーク生まれの「イルセ・ヤコブセン」
今年の梅雨入りは遅いようだが、レインブーツが活躍する季節になっている。
だが果たして、まだ売れるのか。注目がかなり続いており、気になるところだが、玉、つまり提案するブランドも出尽くした感があり、余計に気になる。
しかし、まだあった。ドイツの靴見本市GDSで見付けた。それも、デンマークのブランド。さらにバルカナイズ製法。デンマーク国内の工場で生産。デンマークの靴というと、「エコー」くらい。バルカナイズの工場であることに驚いた。
それも、赤、青、黄色など、ネオンカラーの色出しがきれい。作りもグッドイヤー風に見せており、ウエルト部分に本体とは違う色を使っており、コンビネーションが美しい。
ブランドは、「イルセ・ヤコブセン」。
同名の女性がデザインするデザイナー・ブランドだ。友人から靴のエージェントを依頼されたのをきっかけに靴ショップを持ち、そして自らのブランドを持つに至り、そのキャリアを20年近くになると言う。
展開するのは、レインブーツだけではない。革製を中心とした通常のファッションシューズ、それにウエアも。
ラバーブーツは、「Rub」と名付けられ、レインコートと合わせて、「Rub & Rain」コレクションとして展開されている。レインコートも、質の良さを感じさせるデザインが魅力的だ。
名古屋のベルゴードとエージェント契約を結び、本格的な展開が始まっている。
http://bellegoutte.co.jp/
モダン要素を先取りする「ミックスジャム」
「ミックスジャム」は、大手靴メーカー、マドラスのカジュアルブランド。トレンドに敏感な20代を対象としているが、機能派の側面を持ち合わせているところが良い。
2012年秋冬では、メイン素材としてエラスティック素材を採用している。ゴムを織り込んだテキスタイル素材だが、その特性と素材感を生かしたデザインが特徴だ。
例えばアッパーをワンピース的に大きく面で素材を使い、釣り込んで余った部分を寄せて折り返し革テープで留める。またアシメトリーに素材を組み合わせたり。エラスティックという素材を採用したことによって、ジオメトリックなモダン・デザインを実現している。
最近のトレンドはクラシックが主流だが、その中でモダン要素が出て来そうな流れが見え始めている。
そんな流れを先取り。トレンドというよりモードに傾倒する女性に支持されそうだ。伸縮性があるので機能的であることは言うまでもない。
http://www.shoe-style.jp/