shoes
Posted on 2012/04/03
「Julian Hakes」
この靴、正確に言えばサンダルだが、果たして履けるのか。履ける、歩ける。建築家のジュリアン・ヘイクスが考案したニュー・シューズだ。
製品としてデビューしたのは2011年春夏だが、この3月のGDSに出展していたので取材した。
このユニークな形は、ある夜、ヘイクスが抱いた一つの疑問から始まった。
なぜ、靴にはソールがあるのだろうか…。
ヘイクスは、ロンドンで行われている建築家とブリッジビルダーのコンテストで優勝という経歴を持っている。ブリッジビルダーとは橋梁架設者。彼は橋の設計も手掛けているのだ。
橋は、人を足元から支えるもの。靴も足を支えている。その共通点が、彼を疑問へと導いたのかもしれない。
そして、試行錯誤を重ねること2年。ソールがなくても、足を支えられるバランスを突き止めるに至り、このユニークな形が誕生した。素材は樹脂。流れるようなフォルムは、切れ目のない一つの線で出来上がっている。
名前は「モヒートシューズ(Mojito Shoes)」と名付けた。モヒートとは、ラムベースのカクテルのことだが、モヒートに添えられる、靴のラインが、くるっと剥いたライムの皮を連想させることからの命名だ。
それに非常に今風なのは、製品化のきっかえが、このアイデアをネットで発表したことであったこと。FACE BOOKでも紹介しているが、日本からも問い合わせが相次ぎ、既に10店舗近くからオーダーがあったと言う。
http://www.hakes.co.uk/
「タニヤ・ヘス」
タニヤ・ヘスさんは、カナダ出身のデザイナー。現在は、パリをベースに活動しているが、ヒールが付け替えられる靴を考案した。ヒールのシルエットだけではなく、高さが違ってもOKというものだ。
「私は、背が低い。だからハイヒールを愛用していますが、ヒールが高いと疲れる。と言って、いつも低いヒールではつまらないし、困ることもある。そこで考えたのが、この靴。
例えば、今日は歩き回るからとミドルヒールのパンプスで出掛けたとするでしょ。でも、夜にパーティがある。そんな時、ヒールだけを持参し、付け替えることが出来るんです。もちろんその逆もOKです」(タニヤさん)。
しかし靴は、ヒール高に合わせて前足部の接地を設計するもの。例えばヒール7㎝で設計した靴に4㎝ヒールを付けたら、爪先部分が必要以上に上がってしまう。逆に4㎝で設計したものに7㎝を付けたら、アーチラインが全く合わなくなってしまう。いずれの場合も歩きにくい上に、不自然な歩行によって膝などを傷めることも考えられる。
「もちろん、分かっています。その不具合を解決するために2年半を費やしました。それで辿り着いた独自の設計で、ヒールを付け替えても歩行に影響が出ません」。
実際はどうなのか…。試してみますか。
靴に3種類のヒールがセットされ、ヒール携帯用のポーチ付き。ヒールのデザインによって価格は異なるが、最も安いもので、フランスでの小売価格285ユーロと言う。
http://www.tanyaheath.com/
「プロフェッション・ボティエ」
GDSの会場でのこと、何気に目に留まった靴を手に取った。軽い!!!
担当者が近寄って来て、曰く
「アッパーは、革ではないんです。コルクです。それだけではありませんが、だから軽いんです」。
ポルトガルの紳士靴メーカー、プロフェッション・ボティエとのことだ。
コルクの原材料は、コルク樫という樹木の樹皮。樹皮を剥がし、それを乾燥させるなどすると、コルクが出来上がる。コルク樫の生殖地は主には地中海沿岸だが、中でもポルトガルが最も多く、コルクと言えば、ポルトガル。またコルクは、気泡を持つ組織構造であるため、軽く、弾力性があり、また加工性も良い。靴の素材としての一般的に用いられ、主な用途は底材だが、シート状に加工したアッパー用も見掛ける。
しかし、コルクの色、コルクの表面感。一目でコルクと分かる。見た目では革と見紛うコルクを見たのは初めて。さすがコルクの主要産地ポルトガルだ。
価格はFOBで平均58ユーロ。
プロフェッショナル・ボティエは、日産400足。ポルトの北の靴産地にある。
http://www.ferre.pt/
「クロケット&ジョーンズ」
「クロケット&ジョーンズ」と言えば、英国ウェルトシューズの最高峰的認識。不動の地位を築いている。
そのインポートを40年近くに渡り手掛けるのが、浅草のドゥオモ商事。日本に3社ある「クロケット&ジョーンズ」正規輸入代理店の一つだ。
ドゥオモ商事の赤間社長は、クロケットが日本において無名の時代から知っている。
「英国日本市場視察団として来日し、当時、大手靴メーカーで輸入を担当していた自分を訪ねて来た。良い売り先を紹介して欲しいと言うんだが、当時、高級靴と言えば、バリーか、チャーチ。クロケットなんて知らなかった。しかも持って来た靴が“スワン”というブランドのコンフォート系の靴。誰も見向きもしなかったよ。それが今のようなドレスの洗練されたラインに一本化されたのは、それから数年して、4代目のジョナサン・ジョーンズが社長になってから」。
クロケットの蘊蓄を語る人は多かろうが、こんな話が出来る人は二人といない。そしてインポート・ビジネスは信頼が不可欠だが、ドゥオモ商事とクロケットとのコミュニケーションは、どういう質もものであるかが容易に想像できる。
で、2012年秋冬新作。クロケットと言えば格調高いドレスがイメージだが、ファッション傾向がブリティッシュ・カントリー的なテイストに流れていることを捉え、無骨な感じの丸いトウを出して来ている。カントリーと言うと、同じく英国ノーザンプトンの某ブランドを思い浮かべるが、あれでは無骨過ぎというお洒落な層に評価されている。
◎ドゥオモ商事=台東区浅草5-72-9 TEL03-3871-1431 e-mail info@e-duomo.com
「長靴騎士団」
ハスキーは、浅草を本拠とする靴企業。海外だけでなく国内工場も駆使し、リーズナブルで、ファッショナブルなカジュアルシューズを開発・販売している。
その中で近年のヒット商品が「5-6-Ya(ゴムヤ)」。国内では本当に数少なくなってしまったバルカナイズ製法を含むレインブーツだ。
その「5-6-Ya」が、今春から「長靴騎士団」というユニークなブランドにリモデルして登場する。レインブーツは、つまり長靴。長靴で連想するのは。シャルル・ペロー作の童話「長靴をはいた猫」。そこからのイメージによるブランド名だ。
で、そのラインアップからお勧めが、携帯できる長靴だ。
エナメルのトウ・キャップにユニットソール、そしてアッパーと筒を撥水性のあるポリエステル・ジャージーにして、筒部が折り畳めるようにして、携帯用バッグをセットというもの。
携帯、つまり「身に付けたり、手に持ったりして持ち歩く」ことは、大震災以来、消費キーワードの一つになっている。穿った企画だ。
小売価格は、8,800円