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Posted on 2013/11/05
−−−−製造発売元シューズ・ミニッシュは、2年間で売上げ倍増16億円に
「リゲッタカヌー(RegettaCanoe)」は、大阪・生野の靴・履物メーカー、(有)シューズミニッシュ(高本泰朗社長)が製造販売するユニークなソールのサンダル&シューズ。その初の直営オンリーショップがオープンしたのは、今年4月だが、それを契機に販路を百貨店に、またパートナーショップもと、展開手法を進化させつつ業績を伸ばしている。
「カヌー」の前段には、「リゲッタ(Re:getA」がある。シューズ・ミニッシュの代表ブランドだが、ブランド名の意味するところは「Re:下駄」、つまり「下駄に戻る」。
下駄は、一枚の板に二本の歯がついただけのシンプルな構造だが、実は機能的な履物だ。下駄を履いて歩く時、まず後ろの歯で着地、体重は前の歯に移動するが、前歯の先は空間なので傾き、前方への体重移動をスムーズに進める。これは歩行のための足のローリング運動に適っているのだ。
これに着目した、靴デザイナーであり、靴設計者でもある、シューズ・ミニッシュ社長の高本泰朗さんは、下駄の機能性を完璧なものにしようと、それまでに学んだドイツのフットベッドのノウハウなどを盛り込み完成させたのが、「Re:下駄=Re:getA」だ。
発売は、2005年。最初投入したのは、サンダル・タイプだったが、OLの社内履きといった用途で「履きやすい」「歩きやすい」と口コミでじわじわと広がっていった。そしてヒットに火を付けたのは、TVショッピング。7分間で9000足販売という快挙を成し遂げた。
「リゲッタカヌー」は、このヒットを下敷きに現代人の生活を考え、アスファルトで被われた硬い地面の街を歩くための道具として開発された。開発に当たったのは、もちろん高本社長だ。「リゲッタ」のローリング歩行を引き出す構造に加え、衝撃吸収性、足の支持機能を高めた。その結果、生まれたのが足全体を包む込むようなフォルムの大きなソール。まるでカヌーのようであることから、ブランド名はそのまま「リゲッタカヌー」とした。
販売は、発売当初からインターナショナルな展開を意図し、まず国内の見本市、そして昨年2月、ラスベガスで開催の靴見本市「FNプラットフォーム」に出展した。
「反応は上々でオーダーも入りましたが、韓国の業者さんからブランディングの必要性を指摘されたのが、最も大きな収穫でした」(高本泰朗社長)。
直営店のオープンは、ブランディングに取り組んだ結果であり、同時をCIを導入した。新しいブランド・ロゴは、正方の菱形の真ん中に「一」のようなモチーフ。シューズ・ミニッシュが立地し、「リゲッタ」が生まれた大阪は、かつて四方を運河に囲まれ、それを物流の足として商業地として発展した。菱形は、その大阪を表し、中央の「一」は、「カヌー」のソールをデフォルメしたものであり、二つを家紋のイメージでデザインしたもの。そして大阪で生まれた「カヌー」が世界マーケットという大海に漕ぎ出すという意図を込めている。
ショップは、南船場。売場面積は20坪。細長い店舗を三つのパートに分け、入口側が「カヌー」の商品特徴などのプレゼンテーション・スペース、いちばん奥が売場となり、二つを繋ぐ中間では、「カヌー」のCIを紹介している。
売上げは、サンダルの需要期である夏に向かって伸び始め、7月は1200万円を記録。その他の月も、700〜800万円を売り上げた。
「1人で3足といった複数買い、ファミリー需要が目立ち、また大阪のおばちゃんがお客さんを連れて来てくれる。履きやすい、歩きやすいという商品の良さが評価されての売上げと受け止めている」(高本社長)。
そして、この売れ行きに百貨店が注目。博多と梅田の阪急百貨店が期間限定ショップで取り上げ、いずれも1日30足を売り上げた。
また、パートナーショップの展開も進んでいる。現在、5店舗あるが、すべて家具・インテリア雑貨他小売の(株)ショービ(静岡県浜松市)が出店する。イオンモール伊丹昆陽を1号店に、同熱田、同東久留米(東京都)、同浜松市野、最新ショップは港北東急ショッピングセンター(横浜市港北区)。伊丹昆陽のみが「カヌー・トリコ」の店名で雑貨とミックスの構成、他は「リゲッタカヌー」を店名に掲げるワンブランドショップだ。
他にはない商品特性、言ってみれば1ユニークによってブランディングに成功している例としては、ドイツのフットベッド健康サンダル「ビルケンシュトック」が挙げられるが、「リゲッタカヌー」が目指すのは、そこ。そのためには「夏の最盛期には製造が間に合わず欠品が発生、また秋に入って南船場店の売上げは夏場のようには行かなくなっており売上げの平準化が課題」(高本社長)と言うようにマーチャンダイジング力のアップとブランディングのさらなる強化が課題になろう。
次の目標は、来年4月の東京・渋谷への直営店オープン、それに米国見本市への出展。シューズ・ミニッシュの売上高は、2013年2月期16億円。前期比伸び率は133.3%、前々期(2011年2月期売上高8億3000万円)比で見ると、倍増を達成している。
●リゲッタカヌー公式サイトhttp://regettacanoe.com/
公式ショップサイトhttp://shop.re-geta.com/
大阪市中央区南船場3丁目5-25 プラスト南船場ビル(旧天野ビル)1F
TEL06-6251-7640 FAX : 06-6251-7647
−−個人事業者でも応募可能、締切は11月15日
経済産業省は、ミラノで開催の国際靴見本市ミカムにジャパンブースを設置しているが、来年3月2〜5日に開催のミカムに向けて、10月17日、出展者公募を開始した。
ジャパンブースは、日本の革靴を世界に広くピーアールし、海外展開を促進するための事業。2008年9月にスタート。6年度目事業となり、来年3月は、12回目の設置となる。
ミカムは、イタリア靴メーカー協会主催の国際靴見本市。ミラノ郊外のロー見本市会場で毎年3月と9月の2回開催される。この9月は、出展者1,581社(うち海外593社)、来場者数は38,621人(同20,802人)で、世界最大規模を誇っている。
ジャパンブースは、その7号館に設置され、広さは102㎡。7号館は「Women trendy shoes and mixed footwear」というセグメント。メンズを含むカジュアル・テイストの商品を集積している。また5号館(Women trendy shoes)とセットになっており、ジャパンブースは、メイン動線となる5号館との境の通路沿いだ。
公募出展者数は、10社。
応募条件は「日本製の革靴、及び革製履物」であること。日本製とは 「①メイド・イン・ジャパンを付していること、②日本で鞣された革を材料にしていること(靴・履物の原産国は問わない)」。これ以外に企業規模など問われず、個人事業者も、応募できる。
ただし出展の可否は、有識者で構成される選定委員会の厳正な審査によって決定される。
この9月は、出展10社中4社が受注した。
そのうち初出展での受注が2社あったが、成果を出した出展者に出展後の感想を聞いてみた。
●(株)ディレクション(大阪市生野区)代表取締役、松岡繁正さん
「当社の製品は、袋縫いのくったり感が特徴の、いわば靴らしくない靴。靴の本場で果たして通じるのか。ゼロを覚悟で出展したが、数はいずれにしろ受注できた。日本が自動車などで培った“Made in Japan”の信頼が、ブランドとして世界に認知されており、その背景あっての成果と思っているが、当社のような製品にもニーズがあるということであり、ヨーロッパのマーケット性を考慮した商品企画に力を入れ、次回の成果に繋げたい」。
●(株)アイ・エフ・ビー(大阪市西区、三井文夫社長)海外ディレクター、重岡純三さん。
「当社で開発したエコレザー“ポルティラ”の拡販を目的に、“ポルティラ“をアッパー材に使用した靴で昨年9月初出展。特徴を出すために靴作家の森田圭一さんにデザインと靴づくりをお願いしたが、全く反応がなかった。そこで商品戦略を見直し、2回目の今回は、“ポルティラ”の白を生かしつつ一般性のあるデザインに落とし込んだ「PKM(Portierra by Keiich Morita)」ブランドをメインに打ち出したところ、受注できた。商品戦略の見直しは間違っていなかったということだが、受注数を上げるには、まだ価格が高すぎるので、素材自体の産地の見直しなどによってコスト削減を図り、次の成果を目指したい」。
●(株)ヴァーブクリエーション(東京都台東区、中川宏明社長)ディレクター、猪俣工さん
「当社は、4回目の出展。ジャパンブースが4号館にあった時から出展している。現在、ブースがある7号館は、4号館と比較すると、価格帯が低めの出展者が含まれ、来場するのはボリューム狙いの小売店中心と予想していたが、今回受注したイタリアの小売店は感度が高く、またニューヨークからの受注もあった。反面、前回受注したロシアの小売店の来場はなかった様子。ジャパンブースを必ず覗くという来場者が増えると、ジャパンブースの価値が上がると思うが、7号館について言えば、一概にボリュームとは言えず、ファッション感度の高い小売店が来ており、その点では期待が持てる」。
応募締切は、11月15日。公募の詳細、また応募用紙は、下記のMICAMジャパンブース出展事務局ホームページで入手できる。
http://www.micam-japan.net/
●MICAM・JAPANブース出展事務局=〒106-0032 東京都港区六本木6-1-24 ラピロス六本木4F
Tel:03-5786-3168 Fax:03-5786-3162 e-mail:info@micam-japan.net 担当:渡辺、川谷
−−品質向上を目的に自社工場も開設
浅草の婦人靴企画卸、(株)クロスロード(田辺章社長)が、好調だ。先頃迎えた25年6月期決算の売上高は、前期比104%の52億円。これは、キャラクター問屋と言われる企画卸の中では、トップの水準。また婦人靴卸全体では、20位台と推測され、上場企業の(株)卑弥呼の25年3月期決算57億7500万円に迫る数字だ。
好調は、ジョッキーブーツのヒットから始まった。それにウォッシュ加工のシリーズが続き、そして3年前のレインブーツのビッグ・ヒット。好調の要因は、ファッションとマーケットの動向を的確に捉える企画力の向上にある。
そして前期中の注目すべき動きは、自社工場の開設だ。言うまでもなく、人手不足、また国内生産ではマーケットの求める価格に合わないことから中国を中心に海外での生産が常識のようになっており、廃業に追い込まれるメーカーも少なくない。こうした状況に完全に逆行する動きだ。
「当社も中国で生産しているが、どうしても満足できる品質にレベルアップできず、最終的にお客さまに満足していただけない。品質とは、例えば床革のカウンターを使うなどといった履き心地に影響する部分だが、こうした品質を実現するには、国内で作るしかないが、それでは小売価格が高くなり過ぎてしまう。自社工場で作れば、中間マージンを省くことができるので、価格、品質共にお客さまのニーズに近づけることができる」(田辺章社長)。
工場は、製甲は外注し、底づけだけだが、人員は、資材調達スタッフも含め合計20人ほどの態勢。そのうち経験者は、底づけ3人、仕上げ2人。他の製造スタッフは、すべて新人だ。給与は、「安心して仕事に打ち込み技術を磨ける環境を作りたい」(田辺社長)という考えから月給制を採用している。
生産能力は、現状では、日産150足。自社ブランドの生産のみ。日産250足まで持って行くのが、当面の目標だ。
これだけ本格的な工場を開設したとなると、当然、その先にあるのは直販、つまり直営ショップの展開だ。
現状でも、百貨店は自社ショップ的な展開になっており、有楽町マルイでは「キートス」の店名で本格ショップ的な展開をしており、年間1億3000万円を売り上げている。
「工場を作るからには製造小売という業態を当然、描いており、ファッションビルなどから出店の誘いがないわけではないが、既存のお取引先を大切にしつつ、バランスを取りながら進めて行きたい」(田辺社長)。
なお、同社の基幹ブランドは、「サバサバ」と「あしながおじさん」だが、ケミカルのファッションシューズとしてスタートした創業ブランドの「あしなが」は革物、ケミカル、子ども靴もと細分化し拡大、また売上比率は、6対4で革物だけで構成する「サバサバ」が上回っている。