©2016 LOIN DERRIÈRE L’ZOURAL – FRANCE 3 CINÉMA – RHÔNE-ALPES CINÉMA
CINEMA
ジュリーと恋と靴工場
靴産地ロマンと戦う女の物語
フランス映画である。そして、タイトルに「靴工場」。フランスの靴産地と言えば、ロマンだ。シャルル・ジョルダン、ステファン・ケリアン、それにロベール・クレジュリー。すべてがロマンで生まれ、世界を席巻した。 映画の冒頭に挿入されている1960年代と思われる、白衣の技師がかいがいしく動き回る靴工場の動画は、ジョルダンに違いない。
しかし今、ロマンに存在するのは、クレジュリーのみ。ジョルダンも、ケリアンもない。高級婦人靴産地ロマンの火は、消えてしまった。消したのは、グローバリゼーションだ。低コストの靴産地の台頭と世界市場でのシェア拡大に、世界を席巻した靴工場さえ抗いきれず、倒産に追い込まれた。
失業中のジュリーが、やっと職を得るのが、投資家のオーナーによって、まさに閉鎖に追い込まれようとしている婦人靴工場ロール・バサル。倉庫係としての仕事の初日、運送会社のドライバー、サミーに名前を聞かれ「サンドリヨン」、つまり「シンデレラ」と答える。シンデレラは、靴を履くしかない。
しかし靴工場のシンデレラは、足の踵を切り落としてまで、靴に足を合わせない。工場閉鎖を阻止しようとする女性職人たちと一緒に戦うことになったジュリーが、選び取ったのは、真っ赤なエナメルの外羽根靴。ジュリーと戦う女性職人は、赤いマニッシュ靴で地面を踏みしめ、力強く踊り、歌う。
「ジュリーと恋と靴工場」は、ミュージカル映画。往年のハリウッド・ミュージカル映画を彷彿させる「ラ・ラ・ランド」が大ヒットを取ったが、フランスのミュージカル映画と言えば、ジャック・ドゥミ監督・カトリーヌ・ドヌーブ主演の「シェルブールの雨傘」。その系譜を明らかに感じることができる。
さて、タイトルには「恋」の一文字も。その行方も、赤い靴が知っている。
10月中旬現在、都内では、新宿ピカデリーでロードショー公開中。詳細は、HPで。
©2016 LOIN DERRIÈRE L’ZOURAL – FRANCE 3 CINÉMA – RHÔNE-ALPES CINÉMA
http://julie-kutsu.com/