feature

Posted on 2013/10/15

ヨーロッパ靴見本市【ミカム&GDS】レポート
来場者数の減少が続く中、
新しい見本市の模索が始まる…。

 ミカム(伊・ミラノ)とGDS(独・デュッセルドルフ)、二大国際靴見本市が終了した。その商況をもとに、2014年春夏シーズンに向けた靴ビジネスの状況を考察してみたい。

■GDS■
来場者数21,000人。靴小売市場の構造変化が影響…。

 先に行われたGDSから。9月11〜13日の3日間開催された。出展者は、36ヵ国・815社。中国を筆頭にした自社ブランドを持たずOEM(相手先ブランドによる生産)をメインにしたメーカーは、併催のグローバルシューズに出展しているが、これを合わせてる約1200社となる。グローバルシューズは同じメッセ会場のGDSとは反対側の2ホールを使用して開催されているが、今回から会期を1日延長し、GDSの1日前の9月10日から開催された。
 来場者は、約21,000人と発表された。これには、グローバルシューズも含まれている。このうち約半分が海外からだった。
 前年同期との比較は公表されなかったが、前年のプレスリリースによると、昨年9月は、22,500人となっている。今回の21,000人は、前年同期比7%弱の減となる。
 では、商況はと言うと、出展者によりさまざまだったが、国内小売店の鈍さを指摘する声の方が多かったようだ。
 この要因としては、天候があるようだ。
 ドイツ靴・皮革製品工業会主催の記者会見でドイツ靴小売商連盟会長は、次のように語った。
 「今年の商況は、4月は暖かい気候が続き、売上げは21%増を記録したが、5月は低温、6、7月は暖かくはなったが十分ではなく、売上げは7%増に留まり、1〜7月の売上げは、前年比1.5%減となった」。
 日本は猛暑だが、北ヨーロッパは冷夏の傾向にあり、それが売上げに影響を与えているということ。つまりは小売店は在庫を残している訳で、それが来期の仕入れに影響したようだ。
 また、同連盟会長は、興味深い数字を明らかにした。それは売上げ規模別のマーケット・シェアの変化だ。
 下表に示したが、この10年間で最もシェアを落としたのは「年間売上高50万€(1€=130円換算で6500億円)まで」で17.1%から9.5%へ、次いでが「50万〜200万€(同2億6000万円)」で17.8%から10.7%へ。逆にシェアを伸ばしたのは「1000万〜2億5000万€以下」で18.4%から32.4%とほぼ倍増。大手シフトが進んでおり、「1000万〜2億5000万€まで」と「2億5000万€以上」のシェアは、67.4%にもなる。そして靴小売企業数は、7247社から4889社と、約2400社減少している。
 さらに言うと、eコマースの伸びは記者会見でいつも話題に上るところだが、ドイツ靴・皮革製品工業会のラルフ・リーカー会長は、「インターネットによる靴販売業者は、製造業者にとっても、既に重要な顧客の一部になっている」と語った。
 こうした小売市場の状況が、GDSの来場者数に影響を与えていることは、確実だ。




トレンディなブランドを集めた「white cubes」(ホール4)
毎日行われるファッションショーは、GDSの一つの売りだ



■ミカム■
全体は減少するも海外来場者は元気。
今年上期イタリア靴輸出は前年同期を上回る。


 ミカムは、GDS終了の翌々日の9月15日にスタートし、18日までの4日間開催された。出展者は、1581社。うち海外が593社。来場者は、4日間合計38,621人。前年同期は40,000人を超えており、同期比は6%減となった。ただし海外からの来場は、前年同期の20,584人に対して20,802人で、200人強増加した。
 これからすると、商況についても、GDSと同様に海外が牽引という状況だ。しか本人来場者のコメントは、むしろ買いにくいとするものが多かった。理由は、為替と価格だ。
 アベノミクスによる円安で、ユーロは、ミカム開催時で130円台半ば。加えて「毎シーズン2、3%値上がりしているが、今回はそれ以上の値上がり」「価格は上がっていないが、素材の質が落ちており、果たしてオーダーしていいものかどうか迷う」等々、イタリア・メーカーの打ち出した価格が、さらに上がっていたのだ。
 値上げの要因は、原皮相場の高騰だ。この状況は数年前から続いているが、1990年代後半に起こった狂牛病、口蹄疫の影響が未だ残る中、肉食離れが進み、と殺量が減少、つまり原皮の供給が少なくなっている。これを受けて大量に買い付ける業者が現れ、結果、相場が高騰。当然、革の価格は上がり、それを使用する靴の価格も上昇しているのだ。イタリアの今年1〜5月の靴輸出平均価格も、全体平均の3.5%増に対して革靴は5.9%増(下表参照)。特に革靴が値上がりしているのだ。
 しかし、今年に入り、イタリアの靴輸出は回復している。2012年は、金額1.4%減、足数4.1%減と、2011年を割り込んだが、今年1〜5月は、金額4.9%増、足数1.4%増と共に2011年同期を上回った。相手国別に見ると、目立つのは、まずロシア。金額で4位の輸出国になっており、伸びは金額16.4%増、足数19.3%増。さらに伸びが高いのは、中国。輸出国ランキングは10位だが、それぞれ30.9%増、26.4%増となっている。日本は、9位にランクされ、金額、足数共に8%台の伸びとなっている。
 ただ、日本について言えば、この状況が下半期も続くかどうかは疑問だ。2008年のリーマンショック以降、円高シフトを受けて、インポートへのニーズが高まり、TQ(関税割当)一枠関税割当枠が足りないとの声を頻繁に聞いた。しかしそのピークは、昨年度。今年度に入ってから落ち着いて来ている模様。またこの2月、東京で行われた「シューズ・フロム・イタリー」展では、「昨年9月に発注した時は円高だったが、入荷となった今年は円安で、計算がかなり狂っている。来春夏物のインポート物仕入れは抑えようと考えている」という声を聞いた。
 イタリア靴メーカー協会のクレート・サグリパンティ会長は、「問題は国内にあり、輸出は明るいサインを示した」とコメントしたが、先行きには不透明感がありそうだ。
 なお、ミカムの主催団体であるイタリア製靴工業会は、4月に新定款と名称変更を決定。
「Assocalzaturifici Italiani=アッソカルツァトゥリフィーチ・イタリアーニ(英語名:Italian Footwear Manufacturers’ Association)、日本語では、「イタリア靴メーカー協会」となった。



ミカムは、ロー見本市会場で開催されている。


イタリア以外のデザイナーブランドを集めた「Visitors」(ホール2)



【TOPICS】
「2015年春夏シーズン=来年下期」から会期変更!
ミカム半月、GDSは1ヵ月繰り上がる。


 今回の最も大きな話題と言うと、両見本市の会期の変更だ。
 2015年春夏シーズン、つまり来年下期の開催から、ミカム、GDS共に会期が繰り上がる。明らかにされた会期は、次の通りだ。
【GDS】2014年7月30日〜8月1日(2015年春夏物)
     2015年2月4〜6日(2015年秋冬物)
【ミカム】2014年8月31日〜9月3日(同)
     2015年2月15〜18日
 これまでよりもGDSが約1ヵ月、ミカムが約半月繰り上がる格好だ。
 理由として、ミカムが第一に上げるのが、出展者の要望だ。GDSは、出展を中止した出展者にリサーチした結果を付け加える。その結果とは、「会期が遅い」という声だ。
 なぜ出展者は、早い会期を望むのか。背景には、【GDS】の項で明らかにした小売市場の大手シフトがありそうだ。大手小売業のシェアの高まりは、ドイツに限ったことではない。日本でも年商1000億円クラスのABCマート、チヨダ、ジーフット3社の合計売上高は、3500億円ほどになる。靴小売市場規模を1兆3000億円と推定すると、シェアは約27%になる。こうした状況は、世界各国で進んでいる。
 で、大手小売業は当然、発注量が多い。受けるメーカーは、生産期間が必要となる。加えて前述したように原皮供給量減少・価格高騰の状況下では、早くの素材手配がベターだ。
 また、大手小売業はPBによる展開が主流になっている。発注するか否かは置いても、商品企画のための情報が早く欲しい。メーカーもより早く情報を発信して他社より優位に立ちたい。
 加えて靴専門業種が減少し、ファッションの一部として靴を扱う小売店が増えており、ファッションとの連携を考えた会期設定の必要も出て来ている。
 結果、会期の繰り上げなのである。
 そして早期開催は、見本市の性格にも影響を及ぼしそうだ。GDSは、会期だけでなくコンセプトを変更する。
 新コンセプトは三つ。その中で最も注目されるのは「15 minutes of fame」だ。これは、アンディ・ウォーホルがメディア時代を揶揄して言った有名な言葉だが、メディア性、言い換えると情報発信力の強化を意味している。具体的には、来るシーズンのファッション・トレンドを来場者(小売店)だけでなく消費者にも発信する、PRステージを設け、出展者は企業規模を問わず発信できる等々だ。
 また、ミカム、GDS共に開催地、つまりはミラノ、デュッセルドルフの街全体を巻き込んだイベントの開催を掲げている。
 見本市は元々、受発注の場だけでなく、情報発信・収集の機能も持っている。今後は、後者の要素が強くなって行きそうだ。
 付け加えておくと、スペイン・マドリッドで開催の靴見本市「モーダ・カルサード」は、これまでバッグなどの皮革製品見本市の「イベルピエル」と共催で行われてきたが、ファッション見本市の「SIMM」と統合、アパレル、靴、皮革製品が揃う新見本市「Momad Metropolis」として、9月6〜8日に開催された。来場者は17,423人(内海外11%)。次回は、2014年2月14〜16日に開催の予定だ。


新コンセプトをプレゼンテーションするGDSディレクターのクリスティン・ドーテルモーザーさん


ミカムの記者会見の様子。右列中央が、イタリア靴メーカー協会のクレート・サグリパンティ会長


■MICAM in JAPANESE BRAND■
【ジャパンブース】
経済産業省が設置し6年目、11回目の出展。
「10社中4社受注」の成果上げる。


 見本市は、言うまでもなく受発注の場。日本にとっては、ミカム、GDS共に仕入れ=発注がほとんどだが、受注の場、つまり海外市場開拓のステージとしている事例もある。
 ミカムには、日本による二つのブースがある。その第一は、経済産業省が設置するジャパンブースだ。
 経済産業省が、ミカムにジャパンブースを設けたのは、1998年。今年度で6年目、11回目の出展となった。
 この間にブース位置は、最初の5号館から4号館へ、そして今年3月に7号館となり、今回も3月と同じ位置。移動はすべてミカム側の事情によるものだったが、立地環境は移るごとに良くなっている。7号館は5号館とセットになっており、その境の通路がメイン導線となるが、ジャパンブースは、そのメイン通路沿い。来場者が探さなくても来場できる立地だ。好位置の確保の裏には、ミカム側に対する経産省の粘り強い働き掛けがあったと言う。
 ブース・デザインは、これまでブース正面に壁を立てないフルオープン形式だったが、今回は両サイドも通路ということもあり、3方に壁を立て、かつ出入口を設け、初めて半クローズド形式にした。出展者からは「入りにくい」という声も聞かれたが、初日夕方に行ったレセプション・パーティは、ブースに入りきれないくらいの来場者で賑わった。
 出展したのは、次の10社。
 ・アイ・エフ・ビー(婦人靴)
 ・アウッタ(婦人靴)
 ・ヴァーブクリエーション(紳士・婦人)
 ・サンダー商事(紳士靴)
 ・桜グループ(ユニセックス)
 ・スピングルカンパニー(紳士靴)
 ・ディー・ジェイ・ビー(婦人靴)
 ・ディレクション(婦人靴)
 ・ラガーコーポレーション(婦人靴)
 ・リーガルコーポレーション(紳士・婦人靴)
 このうち初出展は、アウッタ、ディレクション、ラガーコーポレーションの3社。
 結果は、アイ・エフ・ビー、ヴァーブクリエーション、ディレクション、ラガーコーポレーションの4社が受注した。
 アイ・エフ・ビーは、自社開発のエコレザーを、神戸を本拠に活躍する靴作家、森田圭一さんによって「PMK(Portierra by Keiichi Morita)」ブランド他に製品化。前々回に初出展したが、それで得た情報を基に商品ラインを立て直して出展、成果を出した。ディレクションは、大阪・生野のメーカー。ラストを使わない袋仕立ての素足感覚が評価された。ラガーコーポレーションは「yosuke yajima」が受注したが、イタリアで長年活躍した靴デザイナー、矢嶋洋介さんが中国生産で再びイタリアに挑戦した結果だ。浅草の靴メーカー、ヴァーブクリエーションは4回目の出展となるが、「U.(ユードット)」でほぼ毎回受注している。
 「今回のジャパンブースは、出展回数10回前後のベテラン、4,5回の中堅、初出展が上手くミックスされ、またインパクトの強いデザインのブランドが来場者の足を止め、実績組の中堅、そしてベテランに繋ぐという各社の配置の面でもバランスが取れていた。それがブース来場者数を増やし、4社が受注という結果にも繋がった。そもそもジャパンブースは、日本の靴を世界に向けPRし認知を進め、そして一層の海外展開がなされることを目指す場。意欲を持つ革靴ブランドが、多くのバイヤーと出会い、海外での成功の足掛かりの場として、ジャパンブースを活用して欲しい」(経済産業省製造産業局紙業服飾品課、関口直人課長補佐)。
 また、在イタリア日本大使館の河野雅治大使、並びに在ミラノ総領事館の古賀京子総領事が視察、「靴の奥深さに触れ、非常に興味深かった」という言葉を残された。
 来年3月2〜5日のミカムに向けたジャパンブース出展者公募は、10月中旬に始まる。


ミカム初日夕方に行ったレセプション・パーティは多くの来場者で賑わった
オーダー前に試し履きする来場者


IFBの「PKM」
ディレクションの「D’knot」


ラガーコーポレーションの「yosuke yajima」
ヴァーブクリエーションの「U.」




【ドゥ・ラマーレ】
サマーブーツが人気。5回目の出展で取引内容の奥行きが増す。


 もう一つは、ドゥ・ラマーレだ。同社は、浅草の婦人靴メーカー、ラ・マーレの子会社。靴デザイナー、今西優子による「MANA」を基幹ブランドする靴卸だが、親会社のラ・マーレが2010年にバングラデシュに工場を設立したのを契機に、世界戦略を展開しようと、今西デザインによるバングラデシュ工場生産のPB「yuko imanishi +(プラス)」を立て、2011年9月からミカム出展を開始した。
 初回は2号館の〈International Designers〉にブースを取ったが、このエリアはイタリア以外のデザイナーブランドというセグメントであるため、より広範な来場者へのコンタクトを狙って、出展2回目は、2号館の一般エリアに移動し、その立地で出展を続けている。2号館は「Women trendy shoes」というセグメントで、カジュアル・テイストでトレンド志向の高いメーカー・ブランドが出展している。
 5回目の出展となった今回の「yuko imanishi +」2014年秋冬は、きれいな色がコンビネーションになったエナメルのカッター、甲を大きく被うタイプのサンダル、ライト感覚のマニッシュ、またサマーブーツを厚くラインナップした。オーダー状況はと言うと、12,000足が読めるレベルに来ている。
 「継続して買ってくれる顧客が増えており、その中からディストリビューターになりたい、またOEMをやって欲しいというオファーもあり、取引内容に厚みが出て来ている。商品面では、サンダルよりも価格面で他社との差別性が出ること、それにヨーロッパは冷夏の傾向があることで、ブーツの人気が高い。一つでアイデアの段階だが、ブーツに特化という方向も有効ではないかと考えている」(小野田政弘社長)。
 また昨年9月からニューヨークのファッション見本市「コーテリー」にも出展。アメリカ市場での成果も上げつつある。この9月は、経済産業省の補助金事業で出展したチーム・ジャパンの一員として出展した。


ホール2のブース
カラーコンビのエナメルを使ったカッター


シューズ感覚のサンダル
メッシュを使ったサマーブーツ