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Posted on 2013/2/13
ジャン・ドゥセ2013SSオートクチュール・コレクションに登場したロシアのバレリーナ、イリナ・コレスニコヴァ
2013年春夏パリ・オートクチュール・コレクションが、1月21日〜24日まで開催されたが、長年、ミス・フランスのドレス・デザインを担当してきたジャン・ドゥセは、正統派のクラシシスムを主張して限りなくフェミナンなコレクションを発表した。
今シーズンのテーマは、「ロシア・バレエ」。クレープやモスリンをふんだんに使った優雅なドレープ・ドレスやレースに斬新なアクセサリー刺繍が施されているロング・ドレスを中心にソフト・スーツも含めて15着。全体にベージュ系のしっとりとしたスキンカラーを多用しているが、羽根飾りをあしらったゴージャスなブラック・ドレスと眩いゴールデンドレスが登場すると、「ブラボー」と歓声があがり拍手が鳴り止まなかった。
そしてこのショーのイメージ・モデルを務めたのが、サンクトペテルブルク・バレエ・シアターのプリマドンナ、イリナ・コレスニコヴァだ。
イリナは、「白鳥の湖」を最も多く踊っているバレリーナとして世界的に知られており、全く性格の異なる白鳥のオデットと黒鳥のオディール役を演じ分ける見事な表現力には定評がある。
ショーでは、黒鳥の衣装をまとった彼女が冒頭に登場し胸を刺すような鋭い視線でポーズをとり、観客を一瞬で魅了したが、オフ・ステージでは、極めて自然体だ。
バレリーナにとって足は命。靴にこだわりがあるはず。イリナにミニ・インタビューを試みた。
まずは、トウシューズについて。
ロシア・バレエは、伝統的なポアント(爪先立ち)を最もよく継承しているそうだが、このテクニックには下腿の筋肉強化と体の重心コントロールが必要とされる。そして、そのキーポイントは、何と言ってもトゥシューズ。ポワントで立つ時、床に接するトゥの広さや硬さがダンサーによって微妙に異なるため手作りでなければ対応できない。イリナもトウシューズのセレクトには、プロの目が光る。
そして足が命のバレリーナ。日常的に履く靴も姿勢や歩行に考慮したスペシャル・オーダーかと聞くと意外にも「とんでもない。スニーカーとかブーツなど市販靴です」と気さくな返事。ただし怪我をしないよう人一倍気を使い、不安定なハイヒールは絶対にはかない。
普段のファションも、ファッションには興味はあるが、スポーティーなカジュアル・ウエアで過ごすことがほとんどだという。イリナは、子どもを抱えるヤングママでもある。仕事との生活でその両立に奮闘しているらしい。
そんな彼女だが、ショーでは、通常は絶対履かない13センチのヒールに初挑戦した。
ショーの会場は、バレエ・リュスの創始者として名高いセルゲイ=ディアギレフが、1909年に旗上げ公演を行なったシャトレ座。ショーの後は、シャトレ広場を見下ろす劇場のホアイエでシャンパン協会の支援を得て盛大なカクテル・パーティーが催された。
(パリ在住ジャーナリスト、エミコ・サンサルバドール)